おいでおいで・・・
ねむい目をこすりながら
ゆっちゃんがおしいれのとを
そうっとあけたら・・・・
あめがぱらぱら。
かぜがぴゅーぴゅー。
「あっ!」
たいへん、ゆっちゃんの赤いかさがかぜにとばされて、
大きな木にひっかかってるよ。
ゆっちゃんがぴょんととんでもとどかないよ。
「どうしよう」
ゆっちゃんが木のしたでこまっていると、
「どうしたの」
やってきたのはことりさん。
「まかせといて」
ちゅんとかさまでとんだけど、
かぜがつよくてかさにちかづけないよ。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこねずみさん。
「まかせといて」
ちゅうっと木にのぼったけど、
かぜがつよくてのぼれないよ。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこねこさん。
「まかせといて」
にゃあと木にのぼったけど、
かぜにとばされてくるっとおっこちた。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこいぬさん。
「まかせといて」
わんっとかさにむかってぴょんぴょん、
ジャンプしたけどとどかないよ。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこぶたさん。
「まかせといて」
ぶうっと木にどんっとぶつかったけど、
かさはおちてこないよ。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこうまさん。
「まかせといて」
ひひーんとまえあしで木にキック。
でもかさはおちてこないよ。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこぞうさん。
「まかせといて」
ぱおーっとどっすん、木にぶつかったけど、
かさはおちてこないよ。
「ごめんね、ゆっちゃん」
「いいよ」
「どうしたの」
やってきたのはこきりんさん。
「まかせといて」
ひ~んとながいくびをのばしてひょい。
「やったあ」
かさがとれたよと、みんなおおよろこび。
ところが、とびきりつよいかぜがびゅうっとふいて、
ゆっちゃんの赤いかさとこきりんさんをふきとばした。
あわてて、こきりんさんにこぞうさんがつかまって、
こぞうさんにこうまさんがつかまって、
こうまさんにこぶたさんがつかまって、
こぶたさんにこいぬさんがつかまって、
こいぬさんにこねこさんがつかまって、
こねこさんにこねずみさんがつかまって、
こねずみさんにことりさんがつかまって、
ことりさんにゆっちゃんがつかまって。
みんなでおそらにとばされちゃった。
赤いやねのゆっちゃんのいえもみえるよ。
「ゆっちゃん、ゆっちゃん」
「あ、おうちのまどからおかあさんがよんでる」
「ゆっちゃん、おはよう」
「おはよう、おかあさん」
「おかあさん、あのね、ゆっちゃんの赤いかさで、みんなでおそらをとんだのよ」
「みんなって?」
「こきりんさんとこぞうさんとこうまさんとこぶたさんとこいぬさんとこねこさんとこねずみさんとことりさんよ」
「みんなでおそらをとんだの?すごいね、ゆっちゃんの赤いかさ」
「うん、すごいでしょ」
「ゆっちゃん、またおしいれでねたの?」
「うん、だって、おしいれさんがいうんだよ、おいでおいでって」
そしておしいれをあけたらね・・・
かぜがぴゅーぴゅー、ふいてたんだよ・・・
そしたら、ゆっちゃんの赤いかさがね・・・
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